内閣府所管 公益財団法人 日本教材文化研究財団

研究紀要 第38号
特集:乳幼児期の探究III

子育てに活かす交流分析とその日記活用法
井口 祥子 臨床心理士
1.はじめに
2.交流分析とは
3.ストロークについて
4.4つの基本的態度の形成のプロセス
5.子育てにエゴグラムを用いた日記の活用例
6.おわりに

1.はじめに

子どもにとって、家庭は、社会に適応していく基本的な躾がなされる場所であり、親子の無償の愛情を通して自他の尊厳・信頼感を学ぶ場でもある。人間の一生を8つの発達段階に分けた心理学者のエリクソン(E.Erikson)は、乳幼児期の発達課題として、基本的信頼感の獲得を挙げている。また、乳幼児期における養育者との安定した交流が子どもの健全な心身の成長に与える影響については、マーラー(M.Mahler)、スピッツ(A.Spitz)をはじめ、多くの学者に指摘されている。困難にぶつかった時に、自分を信じられる子どもは強いと言われるが、その源泉は、養育者との交流から始まっている。それだけに、親が、日頃から自分の性格傾向やコミュニケーション上の癖を自覚していることは大切である。

以下では、親が子どもとの関わりに交流分析を活用する方法を通して、子どもの心の成長につながる交流を考えてみたい。

2.交流分析とは

交流分析は、米国の精神分析医エリック・バーン(E.Berne)が1950年代に創始したパーソナリティ理論で、対人コミュニケーションのあり方から自分の心の状態を知り、自分の感情、思考、行動を変えるものである。「人は自分の運命を決め、そしてその決定を変えることができる」と考え、自分の自律性を高めることで、人や状況への適切な対応が選択できるようになることを意図としている。

また、交流分析では人は性別、年齢に関わらず誰でも次のような"三つの心の部分"を有し、"五つの心の働き(機能)"を持つと考えている。その五つの心の働きの強弱の度合いは十人十色であるが、交流分析の理論に基づいた心理テストで自分の中の五つの心の働きを知ることができる(表1参照)。

  • ◆親の心 P(Parentの心):親の心の部分は、主に幼少期に自分の親の振る舞いや価値観から影響を受けて作られたものである。この親の心は批判的な親CP(Critical Parent)と保護的な親NP(Nurturing Parent)の二つの機能に分けられる。
  • ◆大人の心 A(Adultの心):自分の置かれている状況を冷静に考慮し、行動する部分。自分の欲求を我慢して適切な行動をとる機能(A)を持つ。
  • ◆子どもの心 C(Childの心):子どもであったときのように、今ここで感じたことを表現し行動に表す部分。子ども時代のあらゆる感情と経験が記録されている。この子どもの心は、天真爛漫な「自由な子どもFC」(Free Child)と、親の顔色をうかがっていつも自分の気持ちを抑えてしまう「順応した子どもAC」(Adaptd Child)の二つの機能がある。

以上の各々の心の機能は、どれも必要な心の働きを担っている。人の性格により、5つの心のどの機能が使われやすいかは異なる。強い部分の心の機能が、その人の行動・感情・思考として表出される。しかし、ACが高く、人に依存的で、いつも他人に合わせることを優先して生きてきた人が、自分で必要な情報を収集し、自分の考えで決断していくことを試みることで、AC値が下がり、A値が上がるという現象が生じる。つまり、人により、心のエネルギーの量は一定で、どこかに多くエネルギーが注がれると、他の部分のエネルギーの量は少量になる。健康でバランスがとれたパーソナリティの持ち主ほど、5つの心の機能が、状況に応じて自由に使われる柔軟性が保たれている。また、同じ状況に置かれていても、どの心の機能からメッセージを出すかで、表現のされ方が異なる。

以下は、母親が子どもへの対応でとった5つの心の機能からの対応例である。


場面例)子どもから母親が、「学校からの大切なプリントをなくしてしまった」と知らされた時の5つの心の機能からの対応例
  • 「なんで、そんな大切なものをちゃんとしまっておかなかったの。いつもだらしないね!」 …CP
  • 「心配なのね。お母さんが先生に電話して新しいのをもらってあげるわ」 …NP
  • 「先生からプリントもらってからのことをよく思いだしてごらんなさい。カバンの中をもう一度ゆっくり確認してみた方がいいかもね。それからどうしたらいいか話し合いましょう。」 …A
  • 「また、失くしたの!知らないよ!」 …FC
  • 「いやだぁ。また先生にお母さんがだらしないと思われそう。」 …AC
表1 エゴグラム・チェックリスト
      ×
CP
( )
1 子供や妻(または夫)が間違ったことをしたとき、すぐにとがめますか。      
2 あなたは規則を守ることにきびしいほうですか。      
3 最近の世の中は、子供を甘やかしすぎていると思いますか。      
4 あなたは礼儀、作法にうるさいほうですか。      
5 何ごともやり出したら最後までやらないと気がすみませんか。      
6 自分を責任感のつよい人間だと思いますか。      
7 小さな不正でも、うやむやにするのが嫌いですか。      
8 「ダメじゃないか」「……しなくてはいけない」という言い方をよくするほうですか。      
9 時間やお金にルーズなことがきらいですか。      
10 よい、わるいをはっきりさせないと気がすまないほうですか。      
      ×
NP
( )
1 人から道を聞かれたとき、親切に教えてあげますか。      
2 頼まれたら大抵のことは引き受けますか。      
3 友人や家族に何か買ってあげることが好きですか。      
4 子供をよくほめたり、頭をなぜたりするほうですか。      
5 他人の世話をするのが好きなほうですか。      
6 他人の欠点よりも、長所を見るほうですか。      
7 人が元気をなくしていると、慰めたくなるほうですか。      
8 子供や妻(または夫)の失敗に寛大ですか。      
9 あなたは思いやりがあるほうだと思いますか。      
10 経済的に余裕があれば交通遺児を引き取って育てたいと思いますか。      
      ×
A
( )
1 あなたは感情的というよりは理性的なほうですか。      
2 子供を叱る前に、よく事情を調べますか。      
3 何か分からないことがあると、人に相談してうまく処理しますか。      
4 仕事は能率的にテキパキと片づけていくほうですか。      
5 あなたはいろいろな本をよく読むほうですか。      
6 子供をしつけるとき、感情的になることは少ないほうですか。      
7 物事は、その結果まで予測して、行動に移しますか      
8 何かするときは、自分にとって損か得かをよく考えますか。      
9 体の調子のよくないときは、自重して無理を避けますか。      
10 育児について、妻(または夫)と冷静に話し合おうとしますか。      
      ×
FC
( )
1 うれしいときや悲しいときに、すぐ顔や動作に表しますか。      
2 あなたはよく冗談を言うほうですか。      
3 言いたいことを遠慮なく言うことができますか。      
4 子供がふざけたり、はしゃいだりするのを放っておけますか。      
5 欲しい物は、手に入れないと気がすまないほうですか。      
6 映画や演劇など娯楽を楽しめますか。      
7 われを忘れて子供と遊ぶことができますか。      
8 マンガの本や週刊誌を読んで楽しめますか。      
9 「わあ」「すごい」「かっこいい!」などの感嘆詞をよく使いますか。      
10 子供に冗談を言ったり、からかったりするのが好きですか。      
      ×
AC
( )
1 あなたは遠慮がちで、消極的なほうですか。      
2 思ったことを言えず、あとから後悔することがよくありますか。      
3 無理をしてでも他人からよく思われようと努めるほうですか。      
4 あなたは劣等感がつよいほうですか。      
5 子供のために、どんなイヤなことも我慢しようと思っていますか。      
6 他人の顔色をみて、行動をするようなところがありますか。      
7 本当の自分の考えより、親や人の言うことに影響されやすいほうですか。      
8 上の人や子供のごきげんをとるような面がありますか。      
9 イヤなことをイヤと言わずに、抑えてしまうことが多いほうですか。      
10 憂うつな気分や悲しい気持ちになることがよくありますか。      
(○…2点、△…1点、×…0点で算出
(杉田峰康著「交流分析」日本文化科学社 P36.37引用)

3.ストロークについて

辞書におけるストローク(stroke)の意味は、一撃、なでる、(痛みを緩和させるために)さする等がある。交流分析におけるストロークは、私たちが人との関わりの中で、「相手の存在を認めるための行動や働きかけの全て」を意味する。コミュニケーションは一連のやり取りの動きであり、心のふれあいでもあることから辞書上のストロークの意味合いと重なりあうものがある。「おはよう」という挨拶に始まり、「早く歯を磨きなさい!」といった声かけもストロークである。生活の中のあらゆる場面で私たちはストロークを交換している。

交流分析の創始者であるエリック・バーンは「人は何のために生きるのか…それはストロークを得るためである」と語っているように、人は誰しも「人から認められたい」「愛されたい」といった基本的欲求をもっている。こうしたストロークが欠乏すると心身が萎縮してしまい、時には死に至ることを児童精神科医スピッツは乳児院での子どもの発達に関する観察から報告している。

ストロークは形の上で言語的なものと非言語的なものに分けられ、各々条件付き(〜だから、〜できたから)のものと無条件(存在そのものを認める)のものに分類される。


ストロークの種類(言語的・非言語的)
  言語的
(言葉によるもの)
非言語的
(肉体的・心理的)
プラスの
ストローク
褒める 慰める 励ます
挨拶する 語りかける
抱きしめる さする 握手する
愛撫する 信頼する うなずく
マイナスの
ストローク
叱る 責める 悪口を言う
皮肉を言う
叩く なぐる ける
つねる 無視する にらむ

ストロークの種類(条件付き・無条件)
  条件付き 無条件
プラスの
ストローク
〜だからいい
〜するから、えらい
大好き、大切な子
(どんなことがあっても)
マイナスの
ストローク
〜がよくない
〜するところが好きでない
嫌い、見たくない
(存在そのものが)

しかし、いつも肯定的なストロークが得られるとは限らない。肯定的なストロークが得られない状態が続くと、その代用として否定的なストロークを求める行動を取るとされている。たとえば子どもが親から肯定的なストロークをもらえないと、わざと親の嫌がることを言ったり、親から叱られるような行動をとることで、自分の存在を認めてもらおうと試みる。

子どもにとって、そのままの自分を愛し認めてもらえるストロークは自尊心を育てていくうえで大切なものである。理想的なストロークの与え方としては、叱るときは条件付ストロークで、褒めるときは無条件のストロークになっているのが望ましいといえよう。

もちろん大人もストロークがマイナスのものばかりを受け取っていると、子どもにプラスのストロークを与える余裕がなくなる。自分自身のストローク状況がどうなっているか時々省みてみることも大切である。

4.4つの基本的態度の形成のプロセス

交流分析では、子どもは、自分という存在が養育者からどのように扱われたか、どんなストロークを得られたかで対人関係における基本的姿勢を形成していくと考える。人は様々な未知の場面に対応することに不安がある。人生早期に幼児が親との関係で形成した基本的姿勢は、一度獲得されると、自己の世界を予測可能な状態にしておくためにますます強化され、その人の対人関係への基底姿勢を形作っていく。そのあり方を交流分析では、「人生の基本的立場」と呼び、以下の4つの基本的立場を挙げている(表2参照)。

当然、一番望ましい基本的立場は「私も、あなたもOK」であるが、いつもこの立場にある人は少ない。しかし、「私はOK、あなたはNOT OK」「わたしはNOT OK、あなたはOK」であっても、「私もOK、あなたもOK」の立場に柔軟に移ることができれば、自他共に認めた温かい交流に繋げていける。自他共に、NOT OKの場合には、少しでも、自分が安心できる人との交流の糸口を見つけながら、そのままの自分を受け入れられるような体験を根気強く積み重ねていきたいものである。


表2

5.子育てにエゴグラムを用いた日記の活用例

(1)エゴグラムについて

エゴとは自我を、グラムはその量を表す。エゴグラムはデュセイ(J.Dusay)によって考案された5つの心の機能の量の割合を図により表示されたものである(表3参照)。

エゴグラムには、自我状態の表れを記述した質問項目への回答(表1参照)をもとに描くものと、直感に基づいて自分で5つの心の機能の量を描くものがある。筆者は、時間の節約もあり、大まかでいいから自分の性格の概要をつかめる後者の方法を日記活用では紹介している。以下は、質問項目によらず、直感で自分の5つの心の機能を描く方法である。


@直感に基づいたエゴグラムの書き方

その日の自分の心の状況(ある特定の場面への対応を思い浮かべてもよい)をエゴグラムで直感的に描いてみる。そのためには、5つの自我状態の区別を理解している必要がある。

(「現在の私」を書き入れていく)
  • ア)まず、横線を引き、その軸の下にCP、NP、A、FC、ACを等間隔で書きこむ。
  • イ)5つの心の機能のうち、自分がその場面で最も使ったと思われる心の機能について、一番高い縦の棒を描き込む。 (描くときに、どんな場面で、どのような態度であったか、どんな会話がなされたか、それらは主に心の機能のどの部分から発されたものであるかなどを手がかりにすると、自分のエネルギーがどの心の機能を使ったかが理解できる。)
  • ウ)次に最も使わなかったと思う心の機能を一番低い棒で書き込む。
  • エ)残りの3つの心の機能について、すでに描いた2本の縦棒を手がかりにして、相対的に残りの心の機能の量を縦棒で描き加えていく。図表は相対的に描画されたものであるから、正確な高さは考慮しなくてよい。
(「理想の私」を書き入れていく)
  • オ)自分で一番どうにかしたい、このままの状態であると不便だと感じている心の機能をひとつ選び、適切な長さの縦棒にして、先ほど描いた「現在の私」の心の機能の横に破線で描き込んでいく。余り深く考えず、直感で書く。
  • カ)次に、「理想の私」が「現在の私」に一番近い(現状のままでいいと思える)心の機能を選び、該当する「現在の私」の横に破線で書き入れる。
  • キ)オとカで書き入れた破線縦棒を手がかりに、残りの3つの縦棒を破線で書き入れていく。
表3
×月△日のエゴグラム

Aエゴグラムを活用した子育て日記活用例

事例1)

中学2年・4歳双子の三人の男の子の子育て中の30代後半A子。夫は育児に協力的であるが、平日は帰宅も遅く、ほとんどA子が家事・育児を行っている。下2人の男の子がやんちゃ盛りでA子の疲労がピーク。また、地方出身であるため、近くに子育てで相談できる人もいない。中学生の長男との言い争いが増え、母子関係が悪化。長男との関係を改善したいと中学校のスクールカウンセラーに相談。そこでエゴグラムを学び、それ以降、エゴグラムを活用しながら、日記をつけるようになった。エゴグラムを日記に活用するようになってから、落ち着いて自分の心や行動を見つめることができるようになり、子育ても以前よりも楽になってきたとのこと。以下は日記の要旨(図は分かりやすく著者が補正)。

もともと几帳面な性格であるため、このところの4歳双子の就寝までのリズムが崩れるばかりでイライラが募っている。長男にも手伝って欲しいが、部活で帰宅が遅く、塾に行ってしまうのでほとんど役にたたない。下の二人の息子は共に自分を譲らぬ性格のため喧嘩が頻繁に起こる。また、同じ双子でも二人の生活ペースが違いすぎて親の方が振り回されている。親として気負いが強すぎるのかもしれない。

また、双子の二人が外でうるさくしてしまったときなど、周りから自分がどんな親だと思われているかという気持ちが度々生じて、帰宅してからドッと疲れてしまう。夫にも、もう少し早く帰宅して欲しいと思うが、気後れして頼めない。それにしても、疲れるときはいつもFC(自由な子ども)が低くなっているなぁ。そのことも、子育てに余裕を持てないことに繋がっているのだろうか。子どもに対しても、無駄な叱責が多かったような気がする。

同じ双子でも個性は異なる。別に二人のペースが合わなくても、例えば就寝時間が多少ずれても、次の日の生活に支障がなければ気にすることはないのかもしれない。私自身、FCを高めて、子育て中であっても、自分の生活を楽しめることもやってみよう。もともと映画を観ることが大好きだったのに、しばらく行っていない。今度の日曜日は、夫がお休みだから子育てをバトンタッチして観たかった映画を観にいってみよう。


(著者コメント)

A子さんは、子育ても家事も一所懸命に取り組む3児の母親である。面談当初は、連日の長男とのバトルも加わり子育てに自信を失いつつあった。カウンセリングを進めるうちに、いつも繰りかえされる長男とのバトルには決まったパターンが繰り返されていることにA子さん自身が気がついていった。筆者は自分が変わりたいと思われた方に「エゴグラムで付ける日記」を薦めている。日記といっても、毎日の記録ではなく、何か行き詰ったときに、エゴグラムを用いて、自分の状態を視覚的に捉えることを趣旨としている。自分の思考・行動・感情を客観的に見ることができるようになるだけで、柔軟な思考が可能になることを感じているからだ。

この日記が書かれた頃は、まだエゴグラム日記を始められたばかりであったが、A子さんは、@今の自分がCP(批判的な親)、AC(順応した子供)が共に高い状態であること。Aそのため、他人の欠点や、自分の足りないところが気になってしまい、子どもに対しても批判的なマイナスのストロークが多くなっていること。B育児に行き詰まりを感じるときの自分の心の状態は、いつもCPとACが高くなっていることに、気が付いた。

自分の行動をエゴグラム日記で振り返ったときに、最初にどうにかしたいと気になるのは、一番高い心の機能と一番低い心の機能である場合が多い。しかし、高いエネルギーが注がれている心の機能を直接下げようとするのは難しい。高い心の機能を無理に下げようとすると、「〜しない」「〜してはいけない」「また、やってしまった!」といった自分への縛りと自己否定感を強化してしまうことが生じやすいからだ。一方、低い心の機能を高める方法は「〜する」「〜を楽しんでみる」といった前向きな行動に繋げやすい。交流分析では、ある人の心の機能のエネルギーの総和は一定であるといわれている。したがって、低い心の機能を高めると、おのずと高い心の機能が低くなるといったことが生じる。エゴグラム日記を書き進める中で、行動の変化はどこから始めやすいかといったことも、カウンセリングの中で話し合っていった。

A子さんは、自分のFCが低いので、それを高めることを課題にし、子育てを離れた自分の時間を楽しむ(FC↑)ことを生活の中に取り入れていくことを試みた。実際頼んでみたら、ご主人は快く子供たちを引き受けてくれ、子ども達は久しぶりにパパと遠出を楽しむことになった。「私が我慢していれば」「絶対今の生活は変えられない」と思い込む前に、現在の自分の心の状態を客観的につかみ、自分ができそうなところから一歩を始めてみる。エゴグラムを活用した日記は、「理想の私」のエゴグラムを書き込む作業を通して、「現在の私」とギャップが視覚化される。それによって、今の自分のとれる行動が具体的にイメージされやすくなるようである。

そうした活用がなされるために、日記の最後には大人の心であるAの観点から、自分がとれそうな具体的行動として書くことをお薦めしている。

6.おわりに

子どもは大人になるまでの間に、友達とのトラブル、クラブでの挫折、受検の失敗といったいくつかの困難に出会う。そうした困難に潰れず、乗り越えていける子ども達には、ある共通点が見られる。

まず、どんな状況であっても、何かしら自分は対応できるといった自尊心・自己コントロール感があること。さらに、自分を理解してくれているサポーターがいるということだ。子どもにとっては、家族が第一のサポーターでいてくれているかが大切なことなのであろう。子育ては長丁場である。親にとって、自分の子どもとの関わり方を客観的に振り返る時間も必要である。エゴグラムを活用した日記は短時間で自分の心の状況がつかめるため、子育てに忙しいママ達にとっても、便利なツールになるのではないだろうか。


〈参考文献〉
杉田峰康著:交流分析 日本文化科学社 1998年