内閣府所管 公益財団法人 日本教材文化研究財団

研究紀要 第39号
特集:習得・活用・探究型学力の育成と評価の理論

「考える力」と「表現する力」を育てる社会科授業構成
─第6学年歴史「新政府による政治」授業づくりを通して─
河田 節生 広島県福山市立神辺小学校 教諭
I.小学校第6学年社会科授業についての課題意識
II.神辺小学校の試み―習得・活用の視点を生かした授業づくり
III.「考える力」と「表現する力」を育てる授業の実際
IV.研究の成果と今後の課題

I.小学校第6学年社会科授業についての課題意識

小学校第6学年の社会科の歴史分野は、我々指導者にとって非常に指導に苦労をする単元が多い。なぜなら、「どうして藤原道長は、立派な寝殿に住み、優雅な生活を続けることができたのか(平安時代)」、「なぜ、日本軍は、元軍を退けることができたのか(元寇)」と児童が追求したい学習課題を設定したとしても、その課題を検証するに十分な説得力のある資料が簡単には得られないからである。インターネット等により、多くの資料が手に入るようになったが、多くの歴史書とともにその情報をタイムリーな検証資料(基礎的資料)にするには、かなりの時間と労力を要することになる。第3、4学年の地域学習や第5学年の産業学習においてならば、リアルタイムでその情報を得ることも比較的容易である。また、ねらいを絞っての調べ学習も可能である。

さらに、受け手側(授業を受ける側)の問題も存在する。いわゆる、「歴史離れ」の問題である。自分の国の歴史に関心を持たない子が増えている。専ら関心の中心は、今の時代、今の自分たちの生活であって、過去の時代の人々や出来事に思いを寄せるということは少なくなってきている。昨今の大河ドラマの影響で、戦国時代の武将や幕末の武士に興味を持ち、テレビやガイドブックに興じる児童も一部にはいるが、全体としては関心が低い。

このような状況の中で、小学校第6学年の社会科の歴史学習で児童にどのような力を育てたらよいのか。言うまでもなく、社会科の目標は、「公民的資質」の基礎を育成すること。それは、「国家・社会の形成者」を育てることである。社会科でこのような力を育てるためには、まずは社会がわかることである。現代の複雑化した社会がわかるためには、6年生でいえば、歴史が読み解けることが必要である。児童が意欲的に歴史に興味関心を持って授業に取り組み、資料を有効に活用しながら検証することができたら、歴史を読み解くことが可能となる。

以上のような課題意識をもとに、本実践では『明治維新から世界の中の日本へ「新政府による政治」』を事例とした小学校社会科の授業内容開発を試みたものである。

II.神辺小学校の試み―習得・活用の視点を生かした授業づくり

1 社会科でめざす子ども像

本校では、社会科の学習を通して次のような児童を育てたいと考えている。

@「確かに考える力」をもつ子ども
  • 社会的事象に関心を持って多面的・多角的に考察できる子ども
  • 調査や資料を活用し根拠をもって考えることができる子ども
  • 社会的事象の特色や相互の関連、意味をより深く追求することができる子ども
A「豊かに表現する力」をもつ子ども
  • 興味や関心、こだわりや問題意識をもち意欲的に対象にかかわっていく子ども
  • 他者や自己との対話の中で自分の立場を明らかにしたり共感したりできる子ども
  • 社会的事象の特色や事象間の関連を言語技術を駆使して説明できる子ども
  • 社会的事象に対する自分の考えを論述できる子ども
B豊かな社会認識をもつ子ども
  • 社会的事象の特色や相互の関連、意味、意義を適切に解釈できる子ども
  • 社会の一員としての自覚をもち責任を果たそうとする子ども
  • 自分たちの地域や国に誇りと愛情をもつ子ども

2 社会科における「考える力」「表現する力」とは


(1)社会科における「考える力」
―社会的事象の特色や相互の関連、意味を追求する力

学習指導要領の目標から、社会科における「考える力」とは、社会的事象の特色や相互の関連、意味について考える力であると捉えることができる。社会的事象の特色や相互の関連、意味を追求していくことで、社会のしくみや成り立ちを理解するとともに自分と社会とのつながりを自覚することができる。そのことが、よりよい社会を築いていく公民的資質の基礎を養うことにつながるのである。

こうした社会科における「考える力」をより確かなものにしていくこと、つまり、社会的事象の特色や相互の関連、意味を適切にとらえる力をつけていくことが社会科の目標の一つであり、本校の課題である。とりわけ、新学習指導要領でも示されているように社会的事象に関する基礎的・基本的な知識、概念や技能を確実に習得させ、それらを活用する力や、課題を探求する力を育成する観点を持って習得すべき知識、概念の明確化を図らねばならない。


(2)社会科における「表現する力」
―社会的事象の特色や相互の関連、意味を根拠を持って説明する力
 

学習指導要領の目標から、社会科における「表現する力」とは、社会的事象を調査し、資料を効果的に活用し、調べたことを表現する力であると捉えることができる。つまり、社会科における「表現する」とは、収集した資料を単に周りへ示すことではない。調査や資料は手がかりや根拠であり、そこに「考える力」を働かせることで、自分の思考過程やその結果を周りへ示すことである。

こう考えると、「表現する力」は調べた社会的事象の特色や相互の関連、意味を根拠をもって説明する力であり、「考える力」と表裏一体のものであると言うことができる。

こうした社会科における「表現する力」をより豊かなものにしていくこと、つまり、自分の考えを根拠をもってより分かりやすく効果的に伝えていく力をつけていくことが社会科の目標の一つであり、本校の課題である。また、新学習指導要領では前述した事象の特色や事象間の関連を説明することに加えて、自分の考えを論述することを一層重視している。

3 見方・考え方を育てる社会科授業づくり―社会科における習得と活用

社会科における習得と活用とは、単元の基礎的基本的な知識を習得し、習得した知識を活用して社会に関する自らの見方・考え方を養い、問題解決を進めていくことである。  そのためにあるべき社会科授業として、広島大学大学院教授の池野範男氏は次の三点をポイントとして挙げている。

1)子どもが獲得する学習内容を見方・考え方として書き出し、達成することができるようにする。
2)子どもたちが見方・考え方を段階的に、達成できるように授業を構成する。
3)子どもたちが自ら、より上位の段階へ「上る」ことができる準備をし、内容の深いわかり方へ至るように指導する。

4 追求の質を高めるための条件―社会がわかる子どもを育てるための三つの条件

社会的事象の特色や相互の関連、意味を追求していくことで、社会のわかる児童を育てていかなくてはならない。つまり、追求していくことで、社会のしくみや成り立ちを理解するとともに、自分と社会とのつながりを自覚することができる。そのことが、よりよい社会を築いていく公民的資質の基礎を養うことにつながるのである。本校では、池野範男氏の指導により、追求の質を高めていくための条件として、次に上げる三つの条件を設定している。

条件@:教えたいこと、学ばせたいことを明確にする。
条件A:どこまで、どのように学ばせたいのかをわかるようにする。
条件B:どんな見方や考え方をすると、そのようなことが学べるかを示す。
 

条件@では、児童にその単元で何をつかませたいのか、学ばせたいのかを明らかにするために、知識の構造化を図り、その単元を束ねる知識、つまり説明的知識や概念的知識を明示することである。このことによりその単元全体を構造的に把握することができる。

条件Aでは、児童に学ばせるレベルを段階的に示し、教師自身がそのことをはっきりとさせておくことが大事である。図で示すと次のようになる。(図@AB)


          6:最良の解決策を実際に行う
        5:解決策を見つける
      4:問題を解決するための考えを発見する
    3:事実を分析して、問題を見いだす
  2:問題を見つけるための事実を発見する
1:問題に気づく
図@ 児童がどのような段階で考えるか(「考える力」の段階性)

5−2               理由(根拠)でもって論理的に説明する
5−1             論理的に説明する
4−2           理由(証拠)を複数示す
4−1         理由(証拠)を1つ示す
3−2       問題について考える
3−1     問題を設定する
2−2   事実と事実の関係を述べる
2−1 事実を示す
図A 「考える力の段階性A」

5−2               日本軍は、ご恩と奉公の関係によって幕府と御家人の結びつきが強かったため元軍を退けることができたが、元寇の後、ご恩と奉公の関係が崩れ、鎌倉幕府の力が衰えた
5−1             御家人はご恩のために命がけで戦ったから元軍が退いた
4−2           日本側は石垣を築いて元の上陸を防いだ
4−1         将軍と御家人との間にご恩と奉公の関係があった
3−2       元軍は暴風雨だけの理由で日本から撤退したのではない
3−1     なぜ、日本軍は元軍を退けることができたのだろうか
2−2   北条時宗は、全国の御家人を動員して元の攻撃を退けることができた
2−1 鎌倉時代、日本軍は元軍を退けることができた
図B 「考える力の段階性A 例 6年生「武士による政治のはじまり〜元と戦う」

条件Bでは、条件Aに関連して、見方や考え方のレベルを設定することである。つまり、学習対象となる社会的事象そのものをとらえるのか、その生成や存在理由をとらえるのか、その社会的意味をとらえるのかをはっきりとさせることである。

III.「考える力」と「表現する力」を育てる授業の実際


―第6学年歴史『明治維新から世界の中の日本へ「新政府による政治」』の場合―

1 教材解釈

明治新政府は、大久保利通を中心に明治維新を進め、版籍奉還や廃藩置県、四民平等など政治や社会の改革を急速にすすめていった。それと同時に欧米の文化を広く取り入れ、世の中の様子も大きく変化する。

いわゆる近代化とは、一般的に述べると封建体制から中央集権体制へ向けてのこうした政治や社会の変革であり、欧米の文化を取り入れることによる人々の生活や考え方の変容である。しかしながら「時間」という視点を持ってこの時代を今一度見直してみると新しい解釈が生まれてくる。つまり、緩やかな時間規律が流れていた江戸時代から、徐々にではあるが人々が時間を守ること、すなわち時間規律を守ることへと明治以降の近代的な社会システムの導入によって抜本的な変更が行われるようになった。この社会システムの背景には、少しでも欧米諸国に追いつこうとする富国強兵政策が大きく影響していた。国家による富国強兵のために国民の時間が管理されるようになったのが明治時代、つまり近代である。

また、本単元(「新政府による政治」)は、近代日本を築き上げていく上で重要な働きをした人物が多く登場する。その誰もが日本の未来をよりよいものにしようとした人物である。しかし、大久保利通と西郷隆盛、板垣退助と伊藤博文に代表されるように考え方の対立も様々あった。こうした人物の考え方や生き方を対比して捉えることで、改革のねらいや意味をより深く考えることができる。また、政府の立場や国民の立場など、立場を設定して改革を検証することで、改革の具体的な影響や意義を考えることができる。

2 単元の目標

【知識・理解】

◎ 図4にみられる知識を理解し、習得することができる。

【思考・判断】

◎ 明治政府が行った諸改革を鉄道・工場・学校への時間規律の浸透と関連づけて考え、解釈することができる。
◎ 新しい国づくりについて問題意識を持ち、見出した問題を追求・解決することができる。

【技能・表現】

◎ 上記の考察の過程で、資料から的確な情報を読み解くことができる。
◎ 上記の解釈、考察した結果を説明することができる。

【関心・意欲】

◎ 明治初期の近代化の進展について興味を持ち、大久保利通や板垣退助などの近代化に努めた人々の働きや、政治や社会の仕組みの変化などを意欲的に調べることができる。
◎ 習得した知識を活用して、授業で扱っていない他の事例を見つけ出そうとする。
◎ 習得した知識を活用して、他の分野においても共通性を見出そうとする。

3 指導と評価の計画(全9時間)



学習内容















評価規準 評価方法
1次
○日本がどのように近代化を進めたかを調べるための学習計画を立てる。
      新しい国づくりに活躍した人々に関心を持ち、明治政府の諸改革について意欲的に調べ、進んで学習計画を立てようとしている。 行動観察
○明治維新について、大久保利通が中心になって行った改革を中心に年表に整理して調べ、江戸時代と比較してそのねらいを話し合う。
      大久保利通のめざした新しい国づくりに関心をもち、江戸時代の社会との違いを考えながら調べてまとめている。 行動観察
      身分制度の廃止や解放令が、人々にとって本当に自由で平等なくらしにつながっていなかったことを理解している。 発言
ノート


○西洋から取り入れた制度や文化について教科書や資料集をもとに調べ、それらを総合して政府のねらいを話し合う。
      近代国家をめざし欧米の制度や文化を取り入れることで、社会の様子が大きく変化したことを理解している。 ノート
○時間規律が取り入れられたことによる国民生活への影響を、鉄道制度の導入の視点からとらえる。
      欧米から取り入れられた時間の概念をもとに、鉄道制度の導入によって国民の生活が大きく変わった理由を考えている。 発言
ワークシート
○時間規律が取り入れられたことによる国民生活への影響を、官営工場の導入の視点からとらえる。
      欧米から取り入れられた時間の概念をもとに、官営工場の導入によって国民の生活が大きく変わった理由を考えている。 発言
ワークシート
○時間規律が取り入れられたことによる国民生活への影響を、学校制度の導入の視点からとらえる。
      欧米から取り入れられた時間の概念をもとに、学校制度の導入によって国民の生活が大きく変わった理由を考えている。 発言
ワークシート

○新しい国づくりについて、板垣退助と伊藤博文のそれぞれの考え方や行ったことを対比してワークシートに整理する。
      板垣退助と伊藤博文の生き方の違いに関心をもち、二人が社会に与えた影響を考えながら意欲的に調べている。 行動観察
      板垣退助と伊藤博文の考え方や業績を対比させて分かりやすくまとめている。 ワークシート

○国会の開設と大日本帝国憲法の制定について、そのしくみや要点を図や表に整理し、その意義を話し合う。
      政府のつくった憲法や帝国議会のしくみ、選挙権について調べ、分かりやすくまとめている。 ワークシート
      大日本帝国憲法の制定や国会の開設により、近代国家としてのしくみが整ったことを理解している。 発言
ノート

4 単元構成


  主な問い

○なぜ大久保利通は、岩倉使節団に加わってヨーロッパやアメリカに行ったのだろうか。
○なぜ身分制度の廃止や解放令が、人々にとって本当に自由で平等なくらしにつながっていなかったのだろうか。
◎明治時代とは、どんな時代なのだろうか。


○明治新政府は、どのような改革を行ったのだろうか。
○明治新政府は、どのような欧米の文化を取り入れたのだろうか。
○明治時代になって現在に時間の進め方と同じ定時法・太陽暦が用いられるようになりました。鉄道・工場・学校ではどのような変化が起きたでしょうか。調べてみましょう。
◎なぜ、鉄道会社は鉄道で働く全ての職員へ時計の所持を義務づけたのだろうか。
◎なぜ、工場では、働いている人が遅刻をしなければ賃金を上げたのだろうか。
◎なぜ、明治時代の学校では、遅刻をした児童に罰を与えたのだろうか。



○なぜ、板垣退助と伊藤博文は対立をしたのでしょうか。
○大日本帝国憲法とはどのような憲法なのでしょうか。
◎これまで学習してきて明治時代とは、どんな時代なのだろうか。まとめてみましょう。

5 学習の展開(頁数の制約のため7/9のみを紹介する)


問題解決
の過程
発問 教授・
学習活動

児童から引き出したい知識
事象提示
・これまでの復習
     
◎なぜ、官営工場では時間を守ることが要求されたのでしょうか。
T:発問する
P:答える
 
◎工場の生産効率を上げるため。
官営工場の利益を上げ、産業の発展につなげるため。
外国に日本の産業が発展してきたことを示すため。
事象提示
・それでは今日は明治時代の学校について学習しますが、江戸時代の学校ってどんな様子でしたか。
T:発問する
P:答える
 
・江戸時代は農民や町人の子どもは寺子屋で「読み・書き・そろばん」を習っていた。
・習いたい時に習って、終わった子から帰る個別指導だった。
・明治時代になるとどうなりましたか。
◇それでは、次にこの資料を見てください。これは当時広島にあった小学校の遅刻に対する罰です。(他の罰則の事例も話す)
T:発問する
P:答える
T:資料提示
:説明
・学校ができて、先生が授業をするようになった。
課題設定
◎なぜ、明治時代の学校では、遅刻をした児童に罰を与えたのでしょうか。
T:課題掲示    
予想
・予想を発表してください
T:発問する
P:答える
 
・一斉に授業が始まるので遅刻は許されない
【一斉授業】
・子どもの時から時間を守る習慣を身につけさせるため
【時間を守る習慣】
・社会からの要請があったから
【社会の要請】
追求
・予想した理由を資料を活用して説明してください。
T:発問する
P:答える
  【一斉授業】
・江戸時代の寺子屋と違い、学校では同じ内容を同時に学ぶので時間を守らなければならなかった。
・教師自身にも時間を守ることが当時は要求された。
  【時間を守る習慣】
・授業で時間の大切さを説いた。
・「小学生徒心得」に「10分前には登校しておくこと」というきまりがあった。
・学校には控え室があった。
  【社会の要請】
・「時の記念日」が制定され時間を守ることが社会の風潮となった。
・当時の漫画にも時間のきまりを守ることの大切さが描かれている。
追求
・ではなぜ政府は、鉄道・工場のみならず学校においても時間を守らせようとしたのでしょうか。
T:発問する
P:答える
 
・政府にとって、富国強兵政策の将来の担い手として、時間を守る児童の方が都合がよかった。したがって、学校においても時間を守らせようとした。
まとめ
◎今日の課題に対する答を論述しましょう
T:発問する
P:論述する
 
◎学校では、きまりや授業を通して時間が守れる児童を育てようとし、遅刻をした児童に対しては罰を与えた。それは、明治の学校では、一斉授業であり、時間を守る習慣が求められ、社会からも要請されたからである。

【資料】

1:遅刻に対しての罰則「広島県師範学校附属小学校」(橋本毅彦 栗山茂久編著『遅刻の誕生』三元社、2001、p.166)
2:「小学教師心得」(橋本毅彦 栗山茂久編著『遅刻の誕生』三元社、2001、p.164)
3:国定第1期『尋常小学終身書』第四学年「第十」(橋本毅彦 栗山茂久編著『遅刻の誕生』三元社、2001、p.173)
4:「小学生徒心得」(橋本毅彦 栗山茂久編著『遅刻の誕生』三元社、2001、p.161)
5:「時の記念日」(橋本毅彦 栗山茂久編著『遅刻の誕生』三元社、2001、p.180−181)
6:「冒険ダン吉(少年クラブ)」1934年4月号(橋本毅彦 栗山茂久編著『遅刻の誕生』三元社、2001、p.182−183)

IV.研究の成果と今後の課題

1 研究の成果

本研究の成果は、次の二点である。

第一は、明治維新以後の政府による諸改革を、「時間」を視点にした時代解釈に基づき授業構成できた点である。このことにより児童は、従来の明治政府による諸改革をその目的と成果について、興味や関心を持ってより深く考察することができた。

第二は、明治時代における社会構造を、「鉄道」・「工場」・「学校」を事例として解釈を試み、授業に生かすことができた点である。そのことにより児童に、時代の見方や考え方を提示することができた。そして、具体的な資料に基づき、生起した課題に対しての検証が可能になった。

2 今後の課題

本研究の課題は、「時間」を視点とした他の時代の解釈が今後の課題である。時間の概念がほぼ国民に定着してきたのが明治時代だとすると、他の時代はどうだったのかを研究し、授業に取り入れていく。そして、児童に、歴史が今の自分たちの生活につながっているという実感を味合わせることにより、興味関心を持って取り組み、「考える力」「表現する力」を育てる社会科授業を構成していきたい。


【主な参考文献】
橋本毅彦 栗山茂久編著(2001)『遅刻の誕生』三元社
鴨川朋弘(2004)『地域を位置付けた小学校高学年社会科の単元開発―第6学年歴史「掛川の時間、日本の時間」』
鳴門社会科教育学会「社会認識教育学研究」第19号