現代の科学技術の進歩はめざましく,特に最近のエレクトロニクス(電子工学)技術の進歩は,知識・情報の処理・伝達の効率化をうながし,これを中枢機能として情報化社会への道を切り開きつつある。このような時代の進展に応ずる教育上の諸般の改善整備に関する問題は,ひとりわが国においてばかりでなく,世界の有力な国々の共通の課題としておのおのその解決に大きな努力をはらっているが,これらの改善整備に関する設計には,いずれも視聴覚教育機器等の利用による新しい教材教具の開発が重要な課題になっている。
来るべき情報化社会は高度学習社会であり,生涯教育の時代と言われる。したがって,その基礎となるべき学校教育においても従来の教授方法の上にさらに発展する社会にふさわしい学習指導上の技術と形態とが考えられなければならない。これらの計画や目標が実現されるためには,これに適合した教材教具の開発と利用を考究し,総合的に人間能力を高める教育理想と技術を確立する必要がある。さらに,教材教具の開発と利用の目標は,技術革新のますます進展する将来にわたって,その社会が要求する人間能力の開発と調和ある心性を養うための新しい教育システムを編み出そうという要請と強く結びつくものでなければならない。
ひるがえって,わが国の学校教育に目を向けるとき,上述のごとき教材教具の開発と利用に関する調査研究とその適正な知識の普及啓発を図ることの必要性は,小学校・中学校および高等学校の全ての教育現場を通じて強く求められているところである。これに関しては,すでに国内においても,各種の公的な試験研究機関による調査研究,教育の専門家による研究や実践が行われ,機器の開発等には相当の成果をあげつつあるが,これを利用する具体的・実際的な教材教具を開発する作業が伴わないというのが現実である。優れた教育機器の生産者側から,ハードウェアに対するソフトウェアの開発に協力してほしいとの声のあるのも故なしとしない。
この財団は,以上のような時代の要請と社会の実態を省察し,教材教具の開発と利用に関する総合的な調査研究を行い,あわせてこれらに関する知識の普及を図り,わが国の教育の進展に寄与したいとの念願から,この企てに及んだ次第である。